こんにちは、補聴器のカワチの服部です。
今回は、日本人の男女別、世代別の平均聴力が大規模調査により解明されたと発表があったのでご紹介いたします。
国立病院機構東京医療センター聴覚障害研究室の和佐野浩一郎室長、慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室の小川郁教授らの研究グループは、過去に行われた約 7 万件の聴力検査の結果から、年齢以外に耳疾患の影響を受けていない対象を抽出し解析することにより、1 万人を超える聴力の加齢性変化に関するデータベースを構築しました。このデータベースは世界最大規模で、10 代から 90 代までの幅広い年齢層の男女別データを含む世界初のデータベースです。
調査結果より以下のような傾向が指摘されていました。
《日本人の傾向》
①男性は女性と比べて高音(特に 4000Hz)の聴力低下が速い
②高齢者では女性のほうが低音部の聴力低下が認められる
③研究期間の前半(2000 年から 2010 年)と後半(2011 年から 2020 年)の平均値の比較および全体を通しての時系列解析を行うと、8000Hz の聴力が全年齢層で徐々に改善している
④高齢になるにしたがって標準偏差(データの散らばり)が大きくなる、つまり個人差が大きくなる傾向がある
⑤研究期間前半後半の平均値比較および全体を通しての時系列解析により 4000Hz の聴力が 40 代以下の世代で徐々に悪化している
⑥男女とも 40 代から聴力低下が一気に顕在化する傾向がある
《上記傾向に関する注釈》
①、②は欧米の中規模データベースの報告と一致しており、人種の影響はなく同一の傾向があることが示されました。
③の原因は、喫煙率の低下、生活習慣病に対する治療の普及、健康意識の高まりなどが改善をもたらした可能性があるのではないかと考えられるそうです。
⑤はポータブル音楽デバイスの普及によって持続的に強大音に曝露され続けていることが悪化につながっていると考えられます。
⑥に関しては、聴力低下が始まる前に積み重なった要因によって低下が始まると考えられることから、若年層における聴覚保護の重要性を示唆する結果となりました。
《世界と日本》
高齢者において難聴の自覚率は欧州 10.6%、日本 11.3%ではほとんど差がないにも関わらず、難聴自覚者の中における補聴器装用率は欧州 41.6%、日本 14.4%と大きく異なっている
《補聴器購入時期に関する専門家の見解》
「今後どのような患者さんに補聴器を勧めたらいいのか」という疑問に対しては、これまでの回答である「生活の中で不便を感じる場合」に加え、「平均的な聴力より低下している場合」という回答を行うことで積極的な聴覚活用を進めていくことが重要であると考えられます。